奈須きのこ「麻枝さんの描く『奇跡』と自分の描く『奇跡』はテーマが逆」など。

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「奈須きのこインタビュー(出席者:武内崇、坂上秋成、村上裕一)」より。

私的に気になった奈須さんの発言をいくつかピックアップしてみました(`・ω・)


■奇跡というテーマにおけるKeyとの相違

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坂上:奈須さんの世界観に関わるお話としてもう一点お伺いしたいんですが、昔『コンプティーク』誌上でTacticsの『ONE』から強い影響を受けたと仰っていましたよね。僕は今でもそれを不思議に思っているんです。何故かというと、奇跡とか超越性という重要なテーマに対する考え方が、奈須さんと麻枝准さんでは逆の方向を向いているように感じられたからなんですね。

奈須:あ。そうですね、たしかにテーマは逆になりますね。

坂上:麻枝さんの描く奇跡というのは無条件にみんなを幸せにしてしまうものです。個人のレベルで解決できない事象があるところに超越的な存在が介入して全てを救済に導くという圧倒的な力を持っている。しかし奈須さんの場合、奇跡を叶えるはずの聖杯を邪悪な結果を呼び寄せるものとして描いている。

奈須:key作品における奇跡は全能であり、物語が求めた装置のような気がします。傷ついたものに、その傷を乗り越えた分だけの幸福を、という。反面、自分の場合は傷と幸福を差し引きゼロにできない。単純に書き手の方向性なんでしょうね。『月姫』にしろ『Fate』にしろ、どこかで救えないもの、叶えられないものが生じています。そうした大きな価値観の違いではないでしょうか。それとは別に麻枝さんの書く日常を面白く思う気持ちがあります。あのギャグセンスは紛れもなく至宝ですよ。でも、『ONE』で僕が最も感銘を受けたのはゲームとしてのパッケージの部分なんです。当時僕はPCを持っていなかったのでノベルゲームの体験が『弟切草』で止まっていた。そんな時、PS版の『ONE』が出た時のファミ通レビューで「SFとしては普通かもしれないが、それでも光るものがある」というような文章を目にしたんです。しかもヒロインの一人である七瀬留美の声優が横山智佐さんだった。「智佐か、買うしかねえな」と思いました(笑)。そうして実際にプレイしてみると、『弟切草』のフォーマットでありながらギャルゲーとして仕上がっていた。青天の霹靂でした。こういうものがありなら自分もやってみたいと思ったんです。

武内:でもPS版しかやってないんだよね。

奈須:そう、それで武内くんと論争が起きたんですよ。「PS版やってる? クソだな、『ONE』はPC版が真実。それ以外は黒歴史」とか言われたんです。それでPC版を見せてもらったら、テキストボックス形式で、しかもボイスがないという大きな違いがあった。そこで「何言ってるんだ君は。横山智佐こそが真実の光」ということで宗教戦争が始まりました。 あ、どうでもいいですよね、この話。失礼しました(笑)

村上:『ONE』との出会いはかなりの部分が偶然に支えられていたんですね。システムに驚いた話をもう少し伺ってもいいでしょうか。

奈須:何より里村茜のシナリオに感じ入りました。 いくら待っても想い人が来ないというシーンのテキスト表示が、文章として美しかった。そこで感じたのが、ビジュアルノベルというのは文字のバランスと演出のタイミングも含めて「ひとつの絵」として成立させるものなんだということです。ただ文章を流すだけじゃないからこそ美しい。一画面ごとにユーザーがグッとくるようなバランスを考えなければいけないんだと悟りました。『月姫』の頃には自分でスクリプトも組んでいたんですが、当時の演出にはそうした意識も入っています。赤い文字を入れたり画面下部にだけ文字を表示したりといったやり方は絵を描けない物書きなりの精一杯の演出でした。『Fate』になってか らは凄まじい映像センスを持つ男が入ってきたので「俺の時代は終わった」となってしまいましたけど(笑)。そこからは文字をどう表示するかという勝負をする必要がなくなって、純粋に絵にあったテキストを書くことを第一としていますが、隙あらば文字表示の気持ちよさを差し込んでいます。


■Rewriteは「画面で絵と文を見せる」という点の進化が止まってしまった

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坂上:今回、この雑誌のタイトルに美少女ゲー ムという言葉を含めず、ビジュアルノベルという言い方を用いたのもそうしたことが理由なんです。美少女ゲームと言ってしまうと、その瞬間に男の子が女の子を攻略するゲームというイメージが揺るがないものになってしまう。けれど、実際には現在美少女ゲームと呼ばれている作品でも、少女との恋愛や少女の救済という要素が薄いものも増えてきている。最近のビッグタイトルで言えば、keyの『Rewrite』も全年齢対象になり、セクシャルな部分もほとんど登場しなくなっています。

奈須:セクシャルな部分の有無は、その物語に必要か否かで考えるものなので問題ではないのですが、今回の『Rewrite』はゲーム部分の進化が問題だと思います。なにをもってADVがゲームとして成り立つのか。選択肢やマルチエンドだけではなく、「画面で、絵と文を見せる」という点の進化を止めてしまっている。他のメーカーならいいのですが、keyは業界を代表するトップメーカーです。先頭に立つものがシステムの向上を見なければ、後に続くものたちも足を止めてしまいかねない。


■ビジュアルノベルとは

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奈須:ビジュアルノベル低迷の理由のひとつは、演出面での頭打ちです。ひとつのフォーマットを十年以上も続けてたらそりゃみんな飽きますよ。これは批評をやっている人には耳の痛い話でしょうが、ビジュアルノベルを語るときにシナリオだけで判断しないでほしい。システム、演出、CG、音楽から、果ては売り方やパッケージングまで含めてひとつのゲームなので、全体を見るべきなんです。シナリオの話をするだけなら小説を語ればいいんですから。一消費者ではなく、批評する側の人間なら、「ゲームを作ってから批評しろ」なんてバカなコトは言いませんが、「この商品はどういった過程で作られるものなのか」ぐらいは学んでいてほしい。制作者の為ではなく、これから制作者を志す次代の人たちの為に。

坂上:それは肝に銘じておきたいお話です。

村上:本当に仰る通りですね。『Rewrite』に関してもう少し喋らせてもらうと、端的に言ってあれは凄く惜しい作品だと思った。作品内でマッピーという携帯電話を使った機能が登場するんですが、それが全然上手く扱えていなかったんですね。たとえば『Steins;Gate』や『THE IDOLM@STER』のように、携帯電話を上手くシステムの中に組み込んで新しいプレイ体験を作ろうとする潮流がある中でそれを回避してしまっていることが残念でした。本当はシナリオ重視のゲームであればあるほど、面白く読ませるためにプラットフォームへの工夫が必要になるはずなんです。無論、技術的な困難さは承知の上ですが。

坂上:ビジュアルノベルに人々が熱狂してきた大きな理由として、ゲームならではのシステムや演出を使って小説とは別の快楽を生んできたという点が挙げられます。そこの更新が止まってしまうと、じゃあゲームにしないで挿絵付きの小説でいいじゃないかという話になる。

奈須:枝分かれする物語でゲーム性をだすか、ゲームのフォーマットでしか味わえない物語を演出するか。ADVを制作する際、制作者はそのどちらによったものなのか定めるべきです。ゲームであるコトとはなんなのか?と。突き詰めていえば、ゲームに自由度は存在しません。ただ、そのジャンルでしか味わえない満足感があるだけです。話はループものに戻りますが、“小説やアニメでは許されない、トライ&エラー”という面白味として、ループものは優秀なんですね。同じシーンなのに微妙に異なっている……といった演出はゲームじゃないと難しい。小説では基本的にできない……というか、ページの無駄になってしまう。唯一の欠点は、ループものは多用できないという点。 各メーカーで一回しか使えないものなんです。二回やったら「このメーカーはまたこのやり方か」と思われてしまいますから。そうすると、次にゲームとしての価値をどこに求めるかを考える。それこそ『Steins;Gate』のように我々の日常における文明の進化をギミックとして作品に取り入れていくか、あるいはスクウェア・エニックスのゲームのように全体のクオリティを上げていくかという話になる。前者のように今の現実に合わせたゲーム性を活かすためにはシナリオもそこにピントを合わせたものになる必要がある。初めから「今回のテーマはネットや携帯です」ということが決まっていればシナリオの方向性も定まってくる。2005年の『最果てのイマ』がまさにそうしたテーマを扱った作品ですが、あれは見事に時代性をとらえたものだったと思います。マシンインターフェイスの上で楽しむノベル、という。



以上個人的にちょっと気になった・関心を抱いた発言の抜粋でした。

今回の『奈須きのこインタビュー』では、上記以外にもループもの・虚淵さん・FateのHF√・CROSS†CHANNEL・けいおんなどさまざまな話題に触れていて非常に面白かったので、気になった方は是非一度原文を読んでおくことをお勧めしてます(^^)
原文:http://netokaru.com/?p=10829

追記:2017年9月現在ページは削除されているようです。

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